その20(10話)191【公転のしくみ~宇宙の法則2】 ベビーベッドで目覚めた巨大な赤ちゃんが、 想像を絶するほど高い天井からぶら下がって回っている オルゴールメリーの中心の火の玉スイッチを、 手を伸ばして引っぱると、 遠心力を失った水金地火木土天海冥が 徐々に中心に寄ってきて、 ドガシャーンとぶつかって、太陽系が消滅した。 --------------------------------------------------- 192 【来世~真彦と明菜の場合】 真彦と明菜が、「来世でいっしょになろうね」 と言って、入水(じゅすい)自殺すると── ミミズになっていた。 雌雄同体だが、ひとりエッチ(単体受精)はできない。 ああ残念。 --------------------------------------------------- 193 【あの世~荒井注の場合】 2000年2月9日、荒井注が自宅のバスルームで 肺不全のため急逝すると── 「バカヤロー!」 目の前に吉田茂がいた。 「なんだバカヤロウ」 「バカヤロー!」 「なんだバカヤロウ」 「バカヤロー!」 「なんだバカヤロウ」 ……… ふたりはずっと、意味もなく言い合っている。 <言わずもがなの解説> ●1953年、衆議院予算委員会で吉田茂首相が西村議員に 「バカヤロウー」と暴言を吐いたことがきっかけで、衆議院が解散した。 俗にいう「バカヤロウ解散」。 ●「なんだバカヤロウ」……ザ・ドリフターズの元メンバー荒井注のギャグ。 --------------------------------------------------- 194 【あの世~栄介の場合】 諸々の人間関係に悩んでいた栄介が、 ‘もう疲れた。ひとりになりたい。’ という遺書を残して服毒自殺すると── 「うううぅぅぅ、く、くるしいぃぃぃ……」 満員電車内にいた。 いや、ちがう。あの世だ。 あの世は、立錐の余地もないほど超満員なのだ。 --------------------------------------------------- 195 【テレビだって】 押入れを片付けていると、テレビのリモコンがでてきた。 見覚えがある。なつかしいなあ。 テレビのほうは5,6年前に壊れたので廃棄した。 これだけとっておいても仕方がないなあ。 なにげなく左下の『10』のボタンを押すと、 「こらあ!」 うわっ、ビックリしたあ。 だ、だれだ? うえのほうからだぞ。 「勝手にチャンネル替えるな!」 あのしわがれ声は……去年死んだじいちゃんだ。 --------------------------------------------------- 196 【ニッポン人の定義18】 『自分史イコール世間の流行』みたいな人生であるが、 先月何が流行っていたか思い出せない人種。 --------------------------------------------------- 197 【来世~夕焼けの場合】 夕焼けが闇に溶けて消えゆくと── 朝焼けになっていた。 (いやあ、せいやんさん、さすがですねえ。 「朝の来ない夜はない」って言いたいのでしょう?) いもうとは小焼けで、 (なんだなんだあ!?) とうちゃんは胸焼けだった。 (どこかで聞いたような……) わっかるかなあ、わっかんねえだろうなあ。 (パクリかあ!) シャバドゥビッ、パァ~。 イエ~イ! (古っ!) --------------------------------------------------- 198 【来世~綱吉の場合】 宝永六(一七〇九)年、五代将軍徳川綱吉が、 「生類憐みの令だけは百年の後まで守れ」と遺言し、 麻疹(はしか)で逝去すると── 蚊になっていた。 パチン! 瞬時につぶされた。 --------------------------------------------------- 199 【おもいはおもい】 口癖ならぬ 思い癖が 胸からとび出し ゆっくり昇って 屋根裏部屋に 溜まっていった ある日 ぎしぎし 天井が鳴って とつぜん抜けて 落ちてきた 積み木みたいな 思い癖 『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』『いつかそのうち』『あしたはきっと』『こんどいつか』『そのうちきっと』…… 押しつぶされて 身動きできない こんどやるから きっとやるから…… --------------------------------------------------- 200 【ニッポン人の定義19】 年が明けると心機一転し、前年の政府の愚策や 企業の不正、凶悪犯罪などをすっかり忘れているか、 覚えているにしても禊(みそぎ)が済んだような気分になっている 寛大(?)な人種。 |